昔は手話を使う事が禁止された?ホント?(アホか)

話を元に戻して、前々回の続きに入りましょう。

よく手話教室でろう者や手話関係者が「手話を取り上げられた」と話すのを聞いて、「昔は手話を使う事が禁止された」と思い込んでいる人もいますが、区別できるように簡潔に書きましょう。

「昔は聾学校の授業で手話を使うことが禁止された」→実際にあった

「昔は社会の全てで手話を使うことが禁止された」→事実ではない

ここから掘り下げていきましょう。

「昔は手話を取り上げられた」と主張する人達の話を見ていくと、ある疑問が出てきます。

手話を生徒が聾学校の外で日常的に使う事まで取り上げられたのでしょうか。

そして、当時の法律などで「手話を使う事は禁止」する法律はあったのでしょうか?

いずれも「いいえ」です。

あきらかに意図的に話をしている関係者も見かけますが、

「昔は手話を使うことが禁止された」「昔は手話を取り上げられた」と、「聾学校の授業で」の主語をぬいて、何も知らない人の同情心を買うように話をするのは悪質な印象操作です。

確かに昭和初期の手話の社会的な認知度は低く、今のような指文字もまだ無く、語彙が少ないなどの短所から、低く見る風潮があったことは事実です。

一方、口話法は万能ではありませんが、高性能な小型補聴器もまだなかった当時ですから、ないよりはあった方がいいことに気づきます。

その口話教育と手話教育の優劣の不毛な論争が続き、聾学校で手話を使う事は日本語取得の妨げになるとする話が出たのも事実です。

事実、昭和8年の全国盲唖学校長会議で口話教育を推進する訓話が当時の文部大臣鳩山一郎から出て、大阪市立聾唖学校校長高橋潔先生がこれに反論したことは知られています。

この訓話を「手話禁止」の根拠として反権力のシンボルであるかのように持ち出す人達がいます。

しかし、全国盲唖学校長会議なんてのは現在もそうですが、全国校長の教育研修の場でしかありません。

手話サークルにもいるであろう、反権力サヨクかぶれや日○組が大好きな「民主主義」をすり替えた、「独裁民主主義」なんてのは日本にはありません。

明らかに言葉の意味がすり替えられていることに気づきます。

いくら文部大臣から訓話が出ようが、その「訓話」の意味が「よい行いのオススメ」であること、訓話が出たから、その方針に絶対に従わなければならないことはないのは考えればすぐに気づく話です。

口話法で成功した女児の話が一人歩きして、盛り上がり、その場で口話法は素晴らしいからオススメですと言えば、どうなるでしょうか?

今みたいにインターネットを通して私の話を知ることなんてできませんし、どうやったら解決できるかを考えている真面目な人ほど真っ先に飛びついてもおかしくないでしょう。

ここで出た高橋潔先生の話は長いので、その内容を一言で言えば、

「お前らはアホか!口話教育さえ導入すれば、ろうあ者のコミュニケーション問題が解決すると思い込むのは間違いやぞ!」(大阪弁)

少し詳しく書けば、聴覚障害児で口話教育に必要な残存聴力がある児童もいれば、残存聴力がまったく無いため口話教育が適しない子供達もいます。

それなのに一律に手話教育を廃止して、全員に口話教育を導入して、猛特訓して、健聴者並になれば、社会の問題が解決できて、メデタシとする考え方は間違いだと指摘していました。

当時は大阪市立聾学校だけが手話法を維持したという話がありますが、実際に当時の大阪市立聾学校では手話だけを絶対にしたわけではなく、口話法を否定したわけでもありません。

日本で初めて行われた聾唖教育の考え方である手話も口話も両方とも適性によって使い分けるのが大切だという認識でした。

「ORAシステム」と呼ばれたこの「適性教育」では手話が必要な生徒には手話法を、残存聴力がある生徒で口話法が適した生徒には口話法をといった具合に適性から判断して、落ちこぼれる生徒を出さないようにしていました。

他の聾学校でも大きく言わないだけで同じようにしていたところもあるでしょう。

この口話教育については一律で厳しい体罰などを伴う、あまりにも行き過ぎた指導が問題になっていました。

昭和13年の全国盲唖学校長会議で文部大臣荒木貞夫から「口話法に適しない児童にも強いるのは行き過ぎであるから、適性などを見て適切に行うようにして欲しい」と訓話が出されています。

荒木文部大臣は「適性」があることを把握して、お願いしていたわけですね。

こうした話に詳しくない一般人に事実誤認をさせないよう、注意をはらいながら、客観的に事実関係をはっきりと伝えるべきです。

でなければ、「ジンケンガー」な皆さんが増えることになります。

ではなぜ当時、聾学校で手話を使う事を「禁止」したのでしょうか?

これが大切な話になってきます。

次回から、なぜ口話教育が始まったのかを書いていきます。

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    難聴・聴覚障害のコミュニケーションと心理状態について、日本でも数少ない当事者の専門家。専門家でも難しい「難聴である自身の自己肯定感の低さ」などメンタル問題を頑張らないで解決できる技法をコーチしています。日本各地からセッションを受けに来る方も多数。手話も学習中。

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